定款とは?後悔しないための書き方や記載するべき内容について解説

定款とは?後悔しないための書き方や記載するべき内容について解説

会社を設立するときに絶対に必要になってくる「定款(ていかん)」。

ですが・・・、
定款 ← そもそもなんて読むの?
何の意味や目的があるの?」
「どうやって書けばいいの?作ればいいの?」

といった素朴な疑問から、「今後の事業展開を踏まえた上で作成するには?」という踏み込んだ疑問までさまざまだと思います。

そこで今回は、会社設立する際に作成すべき「定款」について徹底解説いたします!

  • 定款に記載しなければならない内容
  • 実際の具体例や書き方について
  • 一人でも作れるのか、何を注意すべきなのか

などを深掘りしていきます。

とりあえずこの記事を読むだけで定款の基本から完成まで、すべてが分かるようになっておりますので是非ご参考ください。

2022年から施行された最新版の情報を掲載しています(2022年4月現在)

目次

定款(ていかん) とは?

定款(ていかん) とは?

なんとなく聞いたことはあるかもしれない「定款」ですが、一言で説明するならば

定款とは会社を運営していく上でのルールや憲法などを定めたもの
と表現されます。

たとえば定款にはその会社の事業内容や所在地などの基本情報から、会社の運営指針まで幅広く制定されます。

また会社設立を行う上で定款の作成は法律によって定められており、必ず作らなければならないものです。

要約 : 会社を設立するときに、その会社内での憲法を必ず作成しなければならないということ

定款が必要な理由

定款が必要な理由

「別に日本には国の憲法があるからいいんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、この定款で言う憲法とは会社の運営指針そのもの。

つまり会社を運営する上でのコンパスのようなもので、定款で定めた事業内容や株式発行数などを守りながら事業を進めていきます。

加えて、定款は後述する法務局と公証役場の承認を得て初めて効力を発揮します。そのため定款自体に非常に強い信頼が付与されることと同義です。

このことから、銀行などで借り入れを行う際は必ず定款は見られますし、何より会社絡みでの金銭的トラブルを防止する役目も担っています。

トラブルを防ぐためにも、次に解説する記載内容についてはしっかりと精査を行った上で作成していきましょう。

定款作成から会社設立の流れ

定款作成から会社設立の流れ

定款が必要な理由がわかったところで、作成から会社設立までの流れについて解説します。

主に以下の4つの段階を経て、会社の設立を行っていきます。

  1. 定款の作成
  2. 定款の認証
  3. 法人登記
  4. 会社設立

この記事では、定款の作成から「認証」という手続きを行うまでの行程を詳しく解説してまいります。

定款に記載する内容について

定款に記載する内容について

ここからは実際に作成する上で記載する内容について解説していきます。

最終的に定款は役場の認証を得る必要があるため、やたらめったら自由に書いて良いというものではありません。

「ならどう書けばいいの?」ということですが、記載事項は会社法という法律により以下の3つに分類されています。

  1. 絶対的記載事項
  2. 相対的記載事項
  3. 任意的記載事項

それぞれの役目や意味合いなどについて詳しく解説していきます。

絶対的記載事項について

絶対的記載事項について

「絶対的記載事項」とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。

そのため以下の5つは必ず記載するようにしましょう。

  • 事業目的
  • 商号(会社名)
  • 本社の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金額)
  • 発起人の氏名と住所

これらの記載がない場合は定款が無効化されてしまうため注意です。

事業目的

まず事業目的の記載事項では、「会社の営む事業の目的」を記載しましょう。

法人は個人事業主と違い何をしているか実態が見えづらいため、事業目的を定款に記載することで社会的な信頼向上を意図する狙いがあります。

また飲食店や美容師など、許認可や届出が必要な業種を事業にする場合、定款には許認可の内容に即して書かなければいけません。

逆に事業目的を20も30も書いてしまうと、何をしているのかよく分からなくなるため信用性が低くなり金融機関などからの融資も受けづらくなるため注意です。

事業目的の最後に「全各号に付帯関連する一切の業務」と記載することで、広い範囲をカバーできるため必ず入れることが定石となっています。

商号 (会社名)

商号、つまり正式な会社名の記載も必須となっています。

ですが、同一住所に同一の商号が存在するならば登録(登記)できなかったり、既に使用されている会社名を登録できなかったりというルールが会社法で定められているため注意が必要です。

かならず商号を決めた際はしっかりと問題がないかを精査しておきましょう。

本社の所在地

会社を登記する住所を記載する必要もあります。

しかし、賃貸契約などで商用利用が禁止されている住所や、事業実態のない住所などは控えておきましょう。

もしあなたが自宅で仕事をしたいけど所在地のみ別の場所へ移したい時には「バーチャルオフィス」を使ってみるというのもアリかと思います。

ご自身の環境や法人化する際の優位性を比べながら判断すると良いでしょう。困った時は行政書士などの専門家へ相談してみるのもおすすめします。

設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金額)

「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額・・・。」つまり資本金の記載ということです。

会社を設立する際にどのくらい出資を行なったのか、資金総額を記載していきます。

ちなみに資本金額は高ければ高いほど会社の信用力は上がります。

また銀行からの創業融資などは資本金額がいくらなのかをチェックされて判断材料となるため、資金調達を考えているのであればここのあたりも考えておきましょう。

発起人の氏名と住所

会社を設立する際の発起人全員の氏名および住所を記載します。

だれが発起人に当たるのかという疑問ですが、定款作成や資本金の出資など、会社設立に必要な手続きを行う人となります。

また設立するのが株式会社であれば、出資した資本金額に応じた株式が発起人に発行されます。

相対的記載事項について

相対的記載事項について

「相対的記載事項」とは、記載しなくても良いが記載がない場合はその事項について効力が認められない事項です。

たとえば株券の発行に関する記載などが相対的記載事項に当てはまります。

そのため定款に記載がなければ、株券を発行する義務はありません。

そのほかにもよく記載される事項としては以下のようなものが挙げられます。

相対的記載事項の例

  • 株券の発行
  • 単元株式数
  • 株主総会、取締役会および監査役会招集通知期間短縮
  • 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置
  • 取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除
  • 社外取締役、会計参与、社外監査役及び会計監査人の責任限定契約
  • 取締役会設置会社における中間配当の定め
  • 変態設立事項
  • 設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除
  • 株主名簿管理人
  • 相続人等に対する売渡請求

定款認証 (日本公証人連合会)より

任意的記載事項について

任意的記載事項について

「任意的記載事項」とは、絶対・相対的記載事項に該当しない違法性のない内容を記載する事項です。

ここでミソとなるのが相対的記載事項と違って、定款へ記載せずとも他の文書等で明確にすれば効力が認められるということ。

たとえば、よく記載される事項としては以下のようなものが挙げられます。

相対的記載事項の例

  • 役員(取締役や監査役など)の員数
  • 事業年度
  • 株主総会の開催規定
  • 配当金に関して
  • 役員報酬に関して

あらかじめ定款に記載することで、後から慌てて決めたりしなくてよくなる一方で、変更する際は株主総会で定款変更が必要となってきます。そのため書きたいこと全て書くのではなく、変更の可能性も考慮して精査した上で記載しましょう。

定款に記載するフォーマット

定款に記載するフォーマット

定款に記載する際のフォーマットは、日本公証人連合会の「定款の記載例」より引用すると、以下の要件条件によって変化します。

  • 公開会社か非公開会社なのか
  • 取締役の人数
  • 取締役会の設置の有無

はじめのうちは株式の譲渡制限を行わない公開会社にすると良いでしょう。非公開会社だと共同創業者が辞めた場合、勝手に株を売ってしまうという事態にもなりかねません。

また取締役の人数が1名なのか、3名以下なのか、3名以上なのかでもフォーマットが変わってきます。記載する際は人数と同時に任期の期間も記載しましょう。

3名以上取締役がいる場合は取締役会の設置が可能です。設置することで経営の意思決定機関が取締役会だけで完結できるようになり、素早い行動ができるようになります。

ちなみに取締役会を設置した場合は監査役を置かなければなりません。

定款作成後は「認証」が必要

定款作成後は「認証」が必要

もしあなたが株式会社を設立する目的で定款を作成した後は、「定款の認証」が必要となってきます。

この認証とは公証人によって定款の正当性を証明してもらう手続きです。

つまり、「発起人全員が同意して作成した原始定款」ということを公的に証明することによって、定款の紛失や改ざんなどからのリスクを回避する目的もあります。

ちなみに合同会社や合資会社、合名会社などは持分会社と呼ばれ、出資者が経営者である場合が主なので「経営者と株主が同じとなり争うこともない」と判断されているため定款の認証は義務付けられていません。

「株式会社」「一般社団法人」「一般財団法人」の法人形態の場合は認証が必要です。

定款認証に必要な書類

定款認証に必要な書類

作成した定款に認証をもらうためには、本社の所在地と同じ都道府県の公証役場にて手続きをします。

その際に必要な書類は以下の4つです。

  • 定款 3通
  • 発起人全員の実印
  • 各発起人の印鑑証明書 1通ずつ(3ヶ月以内に発行したもの)
  • 実質的支配者となるべき者の申告書

ここで注目したいのが「実質的支配者」の項目です。

この実質的支配者とは、事業運営や経営を遂行できる個人となります。定義は会社形態によって異なるので解説いたします。

株式会社の場合

  1. 50%以上の株式を保有する個人
  2. 25%以上の株式を保有する個人
  3. 事業活動に支配的な影響力を有する個人(1,2に該当者がいない場合)
  4. 代表取締役(1,2に該当者がいない場合)

一般財団法人または一般社団法人の場合

  1. 事業活動に支配的な影響力を有する個人
  2. 代表理事(1に該当者がいない場合

例外 : 代理人が定款認証に行く場合

基本的に実質的支配者が定款の認証へ出向く事になりますが、代理を立てて認証を行うことも可能です。

そのような場合、認証に必要な書類の他に以下の3つの書類が必要になります。

  • 委任状
  • 代理人自身の実印または認印
  • 代理人の身分証明書または印鑑登録証明書

定款認証の費用について

定款認証の費用について

公証役場からの認証を受けるための費用は以下のようになります。

定款認証の基本料金

  • 認証手数料(1件あたり) : 50,000円
  • 設立登記申請用の謄本(1ページあたり) : 250円
  • 収入印紙代 : 40,000円(社団法人・信用金庫の定款では収入印紙が不要)
    ※電子定款(PDFなど)であれば収入印紙代は0円

定款を作成したら内容に不備がないかあらかじめ公証役場にメールやFAXなどを送って確認してもらいましょう。

ちなみに定款認証に必要な費用は資本金がいくらかによって手数料が変動します。

【資本金別】定款認証の手数料

  • 資本金が100万円未満 : 30,000円
  • 資本金が100万円以上、300万円未満 : 40,000円
  • 資本金が300万円以上 : 50,000円

この資本金別の手数料は2022年1月より施行されており、資本金が300万円以下の小規模事業者にとっては嬉しい知らせとなっています。

また定款を作成する際の費用として、紙の定款を用意するのであれば収入印紙代(約4万円)が必要となります。

しかし、PDFなどの電子定款のみであれば収入印紙代が不要となりさらに安く済むメリットもあるので、特に理由もなければ電子をおすすめします。

合同会社の場合は認証が不要

もしあなたが設立する会社が株式会社ではなく「合同会社」の場合、定款の認証が不要となります。

そのため認証に必要な費用もゼロ。そして電子定款にすれば収入印紙代もゼロ。といった恩恵があります。

電子定款の作成はご自身で行うこともできますが、行政書士などの専門家に依頼して作成してもらうことで、より確実かつ安心できる内容に仕上がるでしょう。

また専門家に依頼するのであれば、あなたの事業規模や今後の展開を加味した事業目的を考えて策定してくれる方がほとんどなので不安な方は頼りたいところです。

定款の変更は面倒くさい?

定款の変更は面倒くさい?

定款の認証まで完了し、会社を設立した後から定款を変更したい場面も多々あるでしょう。

ですが定款の変更は、株主総会での「特別決議」で決定しなければなりません。

しかも定款変更の登記申請を法務局へ行う場合は、登録免許税(約25,000円)が必要です。

あとからの変更はなにかと面倒でややこしくなるので、初期段階でしっかりと固めて提出しておきましょう。

定款を作成代行してもらうには?

定款を作成代行してもらうには?

「なんとか定款に必要な事項や手続きは分かったけど自分でやるのは不安だし面倒…」という方も少なくありません。

そういった際は、行政書士といった専門家へ定款の作成代行を依頼することも可能です。

というのも、弁護士は法律のプロ、税理士は税金のプロ、と言ったように行政書士は「書類作成のプロ」と言われています。

定款や契約書の作成、そのほか行政関係の資料作成などを一手に引き受けられるのが行政書士です。

なかには会社設立を専門業務としている事務所もありますので、迷った方は検討してみてはいかがでしょうか?

法定費用といった手続きする際に必ず必要な費用を除いた場合、報酬額は大体3万円からで請け負っている事務所が多いです。

めんどうな作業は全部任せて、法人化に必要な準備の時間を作るのも一つの手かなと思います。

まとめ

会社を設立する際に必ず必要となる「定款」について、記載すべき事項から手続き、費用などを全て解説しました。

「なんだか難しい言葉ばかり出てきた…」と思うかもしれませんが、1つ1つ確実にこなしていくことで会社設立できます。

また会社の設立は定款の作成だけでなく必要な手続きや準備がたくさん存在するため、設立するまでの全流れを知りたい方は以下の記事をご参考ください。

参考 : 会社設立するために必要な手続きは?起業する時の落とし穴も解説

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