「会社設立ってどうすればいいの!」と、頭を抱えている人を何人も見てきました。
それぞれの理由で会社を設立する必要が出てきた場合にまず最初にぶつかる壁が、設立する方法や手続きについてです。
実際のところ手続きは複雑で、時間もかかってくるのでかなり大変です・・・。
そこで今回は、会社を設立する際に必要な手続きや注意点について解説いたします。
- 会社設立するメリットを知りたい
- どんな手続きが必要なのか知りたい
- 会社設立する前に知識を得ておきたい
- 自分でできるのか人に頼るべきなのか判断したい
というような悩みを抱えている方はぜひご参考ください。
個人事業主と法人について
そもそも会社を設立する前に、個人事業主ではなく法人化する必要があるかどうかを見定める必要があります。
もしあなたの事業が、売り上げや規模が小さく何かあっても個人で責任を負うことができる場合は個人事業主としてやっていく方がベストです。
しかし、人を雇ったり売上が拡大して規模が大きい場合は責任を個人で取ることは難しいため、法人化(会社設立)することが一般的です。
ですが「会社設立って何だかリスクがありそう・・・」と感じる人は少なくありません。
でも安心してください。会社の設立はリスクを限定的にし、個人の頃よりももっと大きな挑戦ができるようになります。
しかも法人化することによるメリットは大きく、あなたの成し遂げたい夢やゴールに必ず一歩近づくでしょう。
つぎに、その具体的なメリットについて解説いたします。
会社設立のメリットについて
会社設立の前に知っておきたいメリットについて解説します。
大きく分けて3つあります。
- 税制面でのメリット
- 会計面でのメリット
- 資金繰りの面でのメリット
これらを駆使することで、個人事業主だった頃よりも大きく動けるようになり、さらには社会的な信頼性までついてきます。
それでは、それぞれを分かりやすく解説していきましょう!
1. 税制面でのメリット
何かを購入したり売却したりした時、税金というものからは逃れられません。
しかし、会社設立をすることで以下のような税制面での優遇や恩恵が受けられるようになります。
- 相続税の軽減
- 節税できる
- 利益に対する税負担が30%程度になる
それぞれの詳細を解説します。
相続税の軽減
たとえば個人事業主が会社設立を行い、資産をその会社に引き継ぎしている場合は「売却」と判断されます。
そのため、個人が亡くなった時に相続対象となる資産が少なくなるため相続税がその分無くなります。
しかも所有会社の株式を相続人や後継者に引き継ぐ際、大幅な相続税の軽減が可能です。
節税できる
なんといっても節税対策ができるのは嬉しいですよね。
法人化した際、資本金が1000万円未満であれば設立した年から2年間、消費税が免除されます。
しかし、1年目の上半期の売り上げや給料支払額が1000万円以上である場合、支払い能力が十分にあると判断されるため2年目からは消費税を納税しなければなりません。
利益に対する税負担が30%程度になる
個人事業主の場合、累進課税が適用されるため利益があればあるほど税率が高くなっていきます。(最大55%)
しかし、「法人税+地方税」がメインとなる法人の場合の税率は30%程度です。
最大税率が20%以上も違うのはかなり嬉しいですね。
2. 会計面でのメリット
法人化することによって経費処理できる範囲が格段に広がります。
たとえば、借入金の返済や固定資産の購入以外の支出はすべて経費として会計できます。
加えて家族経営の場合は、代表者や家族の給料を経費として計上することができるため、税金の分散が可能です。
そのほかにも青色申告を行う前提で、会社に欠損金(赤字)が出てしまった場合でも、10年間繰越することができます。
そのため大規模な投資や事業計画を推し進めることもできます。
3. 資金繰りの面でのメリット
なんといっても経営面でのメリットは本当に大きいのが法人化のいいところです。
会社という形態を持つことで信頼度がアップし、大手企業などとの取引もスムーズに行えるでしょう。
また資金調達をする場面でも、個人よりも会社への融資額が大きくなります。
もっと言えば、
- 個人の場合 ⇒ 返済は無限責任
- 会社の場合 ⇒ 返済は有限責任(返済できなくても会社を精算することで再スタートが可能)
という変化があります。
また投資家やベンチャーキャピタルなどから資金調達できる道が広がるのも会社設立のメリットです。
事業をもっと大きくしていきたい方は必須ですね。
株式会社と合同会社
意外と知られていないかもですが「会社設立」の言葉には、株式会社だけでなく「合同会社」も含まれています。
合同会社は株式会社と比べて、
- 手続きが簡便
- 5万円の定款認証費が必要ない
- 登録免許税の納付費用が9万円ほど安くなる
といった、メリットがあります。
もしあなたが出資を検討していなかったり、資金調達を行わない方向や信頼性について重要視していない場合は合同会社を選ぶと良いでしょう。
会社設立に必要な手続きの流れ
ここからは実際に会社を設立する際に必要な手続きの流れについて解説していきます。
むずかしい単語や複雑な書類が登場しますが、1つ1つ対処していけば問題ありません。
具体的な手続きの流れとしては、
- 基本事項の決定
- 定款の作成・認証
- 資本金の払い込み
- 登記申請
となります。
また会社設立までにかかる時間は平均で3〜4週間程度です。
いろいろな取引や事情があると思うので、会社が必要になる日から逆算して余裕を持って取り組みましょう。
それでは、1つずつ解説してまいります。
1. 基本事項の決定
まずはじめに行うことは「基本事項の決定」です。
- 会社名
- 印鑑の作成
- 資本金の額
- 役員構成や役員報酬額
などが含まれており、会社を作る上で基本的な物事を決めていく必要があります。
各項目について詳しく見ていきましょう。
会社名について
厳密には「商号」と言われますが、会社名は個人の自由に決めることが可能となります。
ですが注意すべきこととして、「同一住所に同一の商号が存在するならば登録(登記)できない」ということです。
同じ会社名で同じ所在地で会社を登記することは禁止されており、会社設立が有効化されません。
これは「会社法」に則って決められていることでもあり、さらには不正競争防止法による制限もかかってきます。
すでに同じ会社名が使用されていないかをよく確認せず同一の商号で登記した場合、営業停止などを請求される可能性も・・・。
しっかりと調査を行った上で会社名は決めていきましょう。
印鑑の作成
会社を設立するにあたって登記手続きを行わなければなりません。その際に一緒に必要となってくるのが印鑑です。
また登記手続きもそうですが、他にも作成しなければならない書類に代表印を押印することが多々ありますので早めに作っておきましょう。
どこの店に依頼するかで変わりますが印鑑の作成には時間がかかることも多くあるので、会社名が決まり次第準備をはじめたいところです。
資本金の額
かなり大事なポイントとなってくる「資本金額の決定」について。
そもそも資本金はその会社の元手金のことで、金額が高ければ高いほど会社の信用力が上がります。
1円からでも始められますが、設立したばかりの会社は実績などの対外的評価がゼロです。
そのような場合の基準として資本金が見られるのですが、業種や事業形態によってはそこまで気にしなくて良いことも多いため、専門家などに相談して決めるとよいでしょう。
役員構成や役員報酬額
「役員報酬は経費にできません。」
報酬額をいくらにするかで、会社が支払う必要のある法人税が変化します。もっと言うと、報酬を受け取った個人が支払う所得税も変わってきます。
これは起業してすぐに襲いかかってくる費用の1つですので、節税できる範囲でしっかりと決めておきたい部分です。
この報酬額によって会社の資金繰りに直接影響してくるので慎重に検討しましょう。
2. 定款の作成・認証
「1. 基本事項の決定」が終わったら、つぎに会社の定款(ていかん)を作成しましょう。
この定款は、会社の基本情報や規則が記載されたもので、助成金や許認可申請などの際にも必要となります。
また記載すべき内容は法律によって定められており、記載漏れがあると受理されず作り直しとなるので注意。
法律で定められている記載すべき事項
- 事業の目的
- 商号
- 本社所在地
- 資本金の額(出資財産額)
- 発起人の氏名・住所
そのほかにも株式発行枚数の記載や株主名簿管理人なども記載できますが、必ず定めておく必要はありません。
というのも定款には、「必ず記載すべきもの・記載すれば効力を発揮するもの・記載は任意なもの」の3つに分かれています。
もし定款を作成するフェーズにあなたがいるのであれば、以下の記事が参考になると思いますのでぜひご覧ください。
定款の作成は少々複雑で難解なものです。
行政書士であれば定款作成のプロなので、「自分で作るのは不安…」という方は依頼するのも一つの手です。
3. 資本金の払い込み
いまは資本金が1円からでもOKになっている会社設立ですが、基本的には100〜1000万円程度が多いです。
また1000万円を超える資本金となると、設立した初年度から消費税が課税されます。
反対に言えば、1000万円以下であれば設立から2年間は消費税が免除されます。
この資本金を払うためには以下の手順で行うのが一般的です。
- 本人名義の口座に本人名義で資本金を振り込む
- 通帳の「表紙・1ページ目・振込記載のあるページ」をコピー
- 払込証明書を作成する
- 通帳のコピーと払込証明書を綴じ、書類の継ぎ目に会社代表印を押印
- 法人名義の口座を開設(法人の設立が完了後)
- 資本金諸金額を法人名義の口座へ振り込む
4. 登記申請
いよいよ最後は会社の登記です。書類を作成して申請しましょう。
また登記自体は本社所在地を管轄する法務局へ申請しますが、提出する書類が会社形態によって異なります。
登記申請に必要な書類一覧
- 登記申請書
- 発起人の決定書
- 印鑑届書
- 印鑑証明書
- 定款
- 就任承諾書
- 選定書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 本人確認証明書
- 出資に関する払込証明書
- 資本金額の計上に関する証明書
またこれらの登記書類はかならず複本しておきましょう。
そのほかにも申請する上で注意すべき点が何個かあるので解説します。
登記申請で注意するべきこと
「いざ登記申請!」となるまで気づかないものですが、申請時にハマりやすいいくつかの落とし穴があります。
それは、
- 登記申請は資本金の振り込み後2週間以内
- 登記申請は代表取締役が行う
- 収入印紙を用意する必要がある(15万円)
- 会社設立日 = 登記申請書の提出日
という点です。
原則として、会社設立の登記は代表取締役が資本金の振り込み後2週間以内に行う必要があります。
ほかにも申請書に必要な収入印紙は15万円もするため、申請前に一度専門家や法務局等で確認してもらってから購入するようにしましょう。
申請自体は郵送でも可能です。
管轄の法務局宛に書留または配達記録郵便で郵送するようにしておきましょう。
会社設立後にすべきこと
書類作って申請してやっと会社が設立できた・・・と安堵するのも束の間。まだまだやるべきことは山積みです。
ここからは会社設立後に必要な手続きを取り上げます。
大きく分けて3つあるので、それぞれ分かりやすく解説していきます。
- 印鑑カードの交付
- 社会保険関連の手続き
- 税務署への届出と申告
印鑑カードの交付
印鑑証明書を取得する際に法務局で提示する必要がある「印鑑カード」。
会社を設立する際の申請手続きで届出を行った「印鑑カード」の交付を受けておきましょう。
カードの交付を受けるためには「印鑑カード交付申請書」を法務局で作成してから窓口に持参すればOKです。
そのほかにも「登記簿謄本」も法務局で取得しておけば、今後の手続きや口座開設時に役に立つでしょう。
社会保険関連の手続き
つぎに年金や労災保険などの社会保険関連の手続きを行います。
加入は義務付けられているので、最初のうちに片付けてしまいましょう。
手続きを行う場所 | 手続き内容 |
---|---|
年金事務所 | 健康保険 厚生年金 (被扶養者異動など) |
ハローワーク | 雇用保険 |
労働基準監督署 | 労災保険 |
ハローワーク、労働基準監督署での必要な手続きは、従業員がいない場合は行う必要がありません。
年金事務所
1名しかいない会社でも社会保険への加入は必須です。
年金事務所には
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
を提出します。
ほかにも家族お被扶養者にするのであれば、「健康保険被扶養者(異動)届」も必要になります。
税務署への届出と申告
会社設立するといろいろな税金がかかってきます。
そのため税金関係の手続きを行うために本社がある地域を管轄する税務署へ届出をします。
おもに以下の4つの書類を用意していきます。
- 法人設立届
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払い事務所等の開設届出書
- 源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書
ほかにも会社の形態や内容によっては、「棚卸資産の評価方法の届出書」や「減価償却資産の償却方法の届出書」が必要ではありますが、判断が難しい場合は専門家へ相談してみましょう。
手続きの代行をしてくれる人は?
ここまで会社設立に必要な手続きを解説してきました。専門知識がある方であれば一人ですべて出来るかもしれません。
しかし、手続きだけでもかなりの時間が取られるのにその他にも各種調整や書類の取得など、当事者にとっては余裕がないこともほとんど。
そういった時に面倒な申請業務をすべて丸投げできるのが税理士や行政書士などの専門家です。
各士業で出来ることはそれぞれ違ってきますが、最もおすすめなのが行政書士に依頼すること。
その理由として、
- 資料作成のプロなので他の士業よりも専門性が高い
- 税理士や司法書士と比べて報酬額が比較的安い
- 建設業・運送業・飲食業関連の会社は各種許認可の手続きも依頼できる
- 会社設立を専門とする人もいるため慣れている行政書士は多い
といったメリットがあります。
専門家に丸投げすることで事業に集中して取り組むことができるため、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
会社の設立に必要な手続きから、設立後の流れまで包括的に解説しました。
なにやら難しい単語や面倒そうな申請がたくさんあったかと思います。
しかし、今は法務局の窓口でも聞くことができますし、無料相談会を開いている専門家も多くいます。
「分からない」「多分大丈夫」と感じたまま進めていくと、最初からやり直しになったり設立できたとしても法律に引っかかる可能性もあります。
また設立する際に決定する基本事項等は今後の事業展開や会社運営にも大きく関わります。
すこしでも分からないことや引っかかることがあれば、行政書士などの専門家に必ず相談するようにしておきましょう。